広報はぼろ2021年6月から10月号掲載のコラム記事
広報はぼろ2021年6月号掲載のコラム記事
羽幌町では4月から「まるごと元気アップ教室」という介護予防運動教室が始まっています。略して「まるげん」です。6月まで体験お試し期間で、7月から正式に教室がスタートする予定となっています(詳細は今月号に掲載されている羽幌町からのご案内を参照ください)。
この教室は、無理なく自分の体力にあった運動を、楽しく、安全に参加できるように、健康運動指導士の方が指導してくれる教室です。体力に自信がなくても、十分ついていくことができる教室になっており、頭で考えながら身体を動かしたりするため、認知症予防にも効果があります。先日私も教室を体験させていただきましたが、頭で考えることに身体がついていかず、ぎこちない動きになってしまうほどでした。そんな教室ですので、笑いが絶えない明るい雰囲気でした。
羽幌病院では2018年11月から「フレイル外来」として、「フレイル」=「介護が必要となる手前の段階」の方への、医療を提供する外来を始めています。この外来の目的も介護予防ですが、「フレイル外来」で運動が必要な方を教室に紹介させていただいたり、あるいは、教室で「フレイル」が疑われる方には「フレイル外来」の受診をお勧めしたりすることで、医療と地域が介護予防で連携することになります。
新型コロナウイルス流行から1年半が経過しますが、この間に高齢者の「フレイル」が進行し、「コロナフレイル」という新たな言葉が生まれるほどです。従来「閉じこもり」は、「フレイル」の始まりとして重要視されており、閉じこもることにより、「認知機能低下」「老年期うつ」「筋力低下」「食事摂取量低下」などを引き起こし、一気に体力を損ねてしまいます。まだ感染症の終息が見通せないところですが、つきあい方もわかってきています。感染対策も行って教室を開催しておりますので、ぜひ参加を御検討ください。
また、最近物忘れを周りから指摘されるようになった方、免許の更新で認知機能が引っかかった方、運動機能の衰えが気になる方などは、羽幌病院の「フレイル外来」で総合的な評価を行い、必要な検査や指導を提案していますので、受診をお勧めします。羽幌病院の地域連携室で受け付けておりますので、お気軽に御相談ください。
広報はぼろ2021年7月号掲載のコラム記事
いよいよ夏、キャンプやバーベキューを楽しまれる方が増えます。そんな楽しいバーベキューでも、反面危ないこともあります。そこで、医師の視点から気をつけて欲しいことをお伝えしたいと思います。
まず、「食中毒」。肉類を中心に適切な保管をすることを心がけてください。食材にいる細菌は常温では増殖する場合があり、調理直前まで冷蔵庫やクーラーボックスで冷やしておきます。調理するときに、器具の使い分けしていますか?生肉を取り扱うとき、焼き上がった肉を取り分けるとき、食べるときで、それぞれ異なった器具を使う必要があります。生肉を扱うときに付着した細菌が、器具(トングや箸、包丁、まな板など)を経由して次の食材へ移してしまうことがあります。バーベキューでは普段料理をしない人が食材を扱うことが多くなり、主婦の方が気をつけている当たり前のことでも、それ以外の人では注意していない人も多くいます。「カンピロバクター」と呼ばれる細菌は、肉の中でもとくに鶏肉から感染し、重症では手足や呼吸する筋肉の麻痺をきたすこともあります。東京都の報告では、国産鶏の61%、輸入鶏で45%から検出されると報告されています。この細菌は加熱で防ぐことはできますが、調理方法や保管方法により加熱時間が異なるため、中心部が焼けているかをよく確認してください。調理に使った器具は、洗剤で洗い、75度以上のお湯で殺菌します。豚肉や鹿肉等の生焼けでは「E型肝炎」もあり、近年報告が増え、町内でも発生しています。摂取してから約1ヶ月半後に発症するので、原因として気付かれにくいこともあります。こちらも十分に焼くことで対策できます。
せっかく準備をしても雨だと台無し…そこで、車庫でバーベキューをされる方もいます。ただ、この時も要注意です。きちんとシャッターは開けておき、換気された状態で行います。密閉された状況では、「一酸化炭素中毒」を起こすこともあります。頭痛や意識が遠のく時は要注意です。すぐに病院を受診する必要があります。
そしてまだまだ気をつけていただきたいのが「新型コロナウイルス」。外で換気がいいから大人数でバーベキュー…は感染リスクが高く、全国でクラスターが発生しています。気分が高揚して大声になりやすいこと、器具を共有して接触感染が起こることなどが挙げられます。今年も同居している家族だけで楽しみましょう。
広報はぼろ2021年8月号掲載のコラム記事
新型コロナワクチン接種は、羽幌病院と加藤病院の医療提供体制の継続、羽幌病院ではコロナ感染症の受入、ワクチンの供給状況、国の方針(7月末までに65歳以上、11月までに全国民に接種)など、すべてを満たしながら行わなければならず、住民の皆様には様々な御意見があるものと思います。接種に対応できる日数が限られ、その中で最大限の方の接種が行えるように、被接種者の動線はできる限り短く、そして医療従事者が動いて接種するという方法をとるなどしています。引き続き御理解のほどお願いいたします。現時点では希望者の7割以上の方が初回接種を終えている状況です。高齢者は対象者の9割以上の方に接種していただいているようです。64歳以下では、高齢者と比較すると低調だったようですが、多くの方に申し込んでいただいたようです。
当初と比較しワクチンに関する知見が増えています。現在流行するデルタ株をはじめ変異株にワクチンが有効か否かという点が問題になっていますが、科学的に証明はできていないものの、ワクチン接種が進む国では感染者は増加しても重症者は増加していないようで、少なくともこれでワクチンを忌避する理由にはならないようです。ワクチン接種後の発症者が他者へ感染させる確率は低いこと、接種が進む地域では感染率が低いことなどから、集団免疫の効果も示されつつあります。誤解されている点として、インフルエンザワクチンと同様に重症化を予防するだけと思われがちですが、今回のワクチンは有効率が高く(インフルエンザの2倍)、感染予防に意義があることが報告されています。
変異株では若い方が重症化するなど、従来と傾向が変わってきている点は気になります。このウイルスは「かしこいウイルス」だと言われ、私たち人間の隙を突いてきます。とくにいまは、ワクチン未接種者を契機としたクラスターの報告が相次いで報告されています。ワクチン接種済み(2回目接種から2週間経過)の方でも感染する可能性はあり油断してはいけませんが、その他の方は適切な感染対策の継続をお願いします。
接種を申込み忘れた方は羽幌町にお問い合わせください。ワクチン接種に不安がある方は、北海道のコールセンターのほか、当院に相談いただければ、医師が電話診療で対応することも可能です。
広報はぼろ2021年9月号掲載のコラム記事
「おいしいものは脂肪と糖でできている」・・・某飲料メーカーのCMのコピーで、脂肪や糖の吸収を抑える特定保健用食品の飲料の宣伝でした。この表現は言い得ていると感心するのですが、確かに普段から「おいしい」と感じる(私の主観ですが、ほとんどの人がそう感じる)食品には「糖質」や「脂質」が多く含まれています。では、「脂肪」や「糖」を減らさなければならない人は、「おいしい」食品を食べてはいけないのでしょうか…。「脂質」や「糖質」が含まれていないものは「おいしくない」かといえば、決してそうではなく、「おいしさ」には、甘味や辛み、塩分、出汁など、料理を引き立てる要素もあります。「脂質」や「糖質」を減らして栄養バランスを整え、引き立て役である「うまみ」を上手に使えば、「おいしい」と感じることができます。
糖尿病の患者さんと話をすると、「甘いものを摂ってないのになんで血糖が高いの?」と聞かれますが、「糖」=「甘いもの」とは限りません。「糖質」とは、砂糖だけではなく、穀類やイモ類、果物などに含まれているので、「甘いもの」を控えても、普段からよく口にする米でもパンでも多くの食品に「糖質」は含まれます。ですから、甘いものを食べなければ糖尿病が悪くならないということはないのです。「糖質」をほとんど摂らないということについては賛否両論がありますが、一般論としてエネルギー源である「糖質」が一定程度体内に入らなければ、タンパク質がエネルギー源として使われてしまうため、筋肉量の減少を引き起こしてしまうので、とくに高齢者の方にはおすすめできません。「糖質」の量を過剰な状況から適正な量にすることが重要です。
おそらく食事を決めるときに、食事の栄養素を意識している方は少ないでしょう。食品には最近では栄養成分が表示されていることが多くなっていますから、普段からそこに注目するようにするといいでしょう。「糖質」は「炭水化物から食物繊維を除いたもの」なので、「炭水化物を控える」と考えてしまうと、必要な食物繊維が欠けてしまうこともあるので注意しましょう。どの食材・食事に「糖質」が多く含まれているかわかれば、「糖質」が多い食材の含むものを食事の最後に食べるようにします。それだけでも体への「糖質」の吸収を遅らせることができます。
広報はぼろ2021年10月号掲載のコラム記事
コロナウイルスの流行もあり、お酒を大人数で集まって飲むという機会は減っています。そのおかげで家計が助かっているという人もいれば、自宅で飲酒する機会が増えて、飲酒量も一緒に増えてしまった方もいるかもしれません(私は後者です・・・)。
「酒は百薬の長」と言われます。中国古代の「漢書」に由来する言葉だそうです。塩や鉄と並んで、酒は生活に欠かせないので国の専売とするという話の流れで出てきます。一方、「徒然草」には「百薬の長とはいへど、よろづの病はさけよりこそおこれ」とあります。「酒は万病の元」とも言われるゆえんはここにあります。他にも強いて飲ませてはいけないなどのアルコールハラスメントや、財産を失うことなど、現代に通じることを700年前の偉人が書いています。
余談が長くなりましたが、どちらも正しいわけで、「適量」にしなければなりません。ではどの程度が「適量」なのでしょうか。厚生労働省は「1日平均でアルコール20g」が「節度ある飲酒量」、「男性40g以上、女性20g以上」を「生活習慣病のリスクを高める飲酒量」としています。女性の方がアルコールの分解速度が遅いため、女性の方が少ない量でもリスクがあるとされています。アルコール20gは、ビール500ml缶(5%)1本、日本酒1合、缶チューハイ(7%)350ml缶1本、焼酎を割らずに100ml、グラスワイン2杯となります。計算は、「お酒の量(ml)×アルコール度数/100×0.8」です。
飲酒と病気について様々な報告があり、「全く飲まない人よりはちょっと飲む人(1合未満)の方が死亡率が低い」というもの、「高血圧や脳出血は消費量が増えるに従ってリスクが増える」と異なりますが、共通することは摂取量が大量ではリスクが高いということです。肝障害も後者で、アルコール60g(先ほどの適量の3倍)を毎日3年で脂肪肝、そして肝炎を経て、25年で肝硬変になるとされ、肝硬変は肝臓がんの危険があります。症状がなく進行するため、定期的な血液検査で状態を把握しておくことが重要です。血液検査のγGTPが知られていますが、検診前に数日禁酒した程度では下がらず、3週間程度で半分、さらに3週間で半分と言われます。裏を返せば、禁酒で改善させられるわけですので、アルコールの肝障害を指摘された場合は、頑張って禁酒してみましょう。