広報はぼろ2021年11月号掲載のコラム記事
広報はぼろ 11月号
先月のこのコラムでは、アルコールと病気のことをお話しし、アルコールにより肝臓が傷害されることも触れました。しかし近年は、アルコールを飲まない方の肝機能障害も増えているのです。「非アルコール性脂肪性肝疾患」と呼称され、「NAFLD(ナッフルドまたはナッフルディ)」と略されています。これはアルコール量が、男性で1日30g以下、女性で20g以下しか飲酒しないにもかかわらず起こる脂肪肝のことです。このNAFLDは、「脂肪肝」と「脂肪肝炎」の2種類に分けられます。NAFLDは成人の30%前後と非常に多くの方が該当しており、NAFLDの10%が「脂肪肝炎」とされますので、成人の3%となります。日本人は遺伝子の影響で、肥満ではない方でもNAFLDになりやすいとされています。
この「脂肪肝」と「脂肪肝炎」は予後が異なり、「脂肪肝」であれば予後は良好ですが、「脂肪肝炎」の場合は、肝炎が進行すると肝硬変となり肝臓癌が発生するほか、心筋梗塞や脳梗塞を発症する危険が高いとされています。この両者を見分けるには、厳格に診断するためには肝臓に針を刺して調べることになるのですが、危険を伴う手技ですので、よほどでなければ避けたいところです。そこで最近は、血液検査だけでもその可能性を示唆する計算式があり、「FIB-4 Index」と呼ばれるものがあります。計算式はやや複雑ですが、インターネットで計算できるサイトがあり、ご自身の血液検査を持っている場合は入力すると出てくるものがあります。現役世代で健診を受けているような方では試してみるとよいでしょう。「脂肪肝炎」の疑いがある場合は、CTやMRIの画像検査での確認が必要です。
治療は、有効であることがはっきりしているものは、「7%の体重減少」とされます。体重を減らすことは、肝臓の値だけではなく、肝臓の組織を改善する効果もあります。ほかに糖尿病や高血圧、脂質異常症があれば、それらの治療を行うことが有効です。脂肪肝があると薬物治療だけでは糖尿病の改善が得られにくい事も多く、やはり体重減少が大事になります。ビタミンEは抗酸化作用があることから有効性も報告されており、基礎疾患が無い場合を中心に投与することがあります。
肝臓は沈黙の臓器で症状は基本的にはありません。健診で気付かれることがほとんどですので、飲酒しない方でも肝臓の数値は注意して見るようにしておきましょう。