広報はぼろ2022年6月号掲載のコラム記事
先月に引き続き「浮腫」の話です。
外来で相談するときに大事なことは「いつからむくんでいるか」です。浮腫は皮下組織に余分な水分が貯まってしまうものですが、慢性的にむくんでいる場合は皮下組織に老廃物も貯まってしまうのでより改善しにくくなりますので、元々の原因と異なった診断になる場合があります。「どこがむくんでいるか」も重要で、膝より下が両方ともむくむことが多いですが、腕や手、顔など全身がむくむこともあります。その場合は心不全をはじめ、全身の病気を考えていく必要があります。膝より下の場合でも、どこのむくみが強いかよく観察してみましょう。足の表側でも小指側の方がむくみやすく、親指側はむくんでいないことが多いです。ふくらはぎでも骨のある側のほうがむくみやすくなります。これは筋肉が少ないためで、動きが少ない分むくみやすいのです。片方の脚だけむくむこともあります。その場合は、静脈が血栓で詰まっていることもありますし(深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群))、熱を持ったり、赤く腫れていたら蜂窩織炎という細菌感染症であることもあります。体の構造上(太い静脈(全身から心臓に戻る血管)は体の右側を通るので、左脚の静脈の方が太い血管まで距離が長い)、左脚と右脚では左脚の方がむくみやすいので、どちらの脚が強くむくんでいるか左右の差を見ることも大事です。浮腫で相談されるときは脚(ふくらはぎから足先まで)を出しやすい服装で受診しましょう。指で押して痕がつくか、痕がどのくらいで元に戻るのかを診察することがあります。
治療として利尿剤(全身の余分な水分を尿として出す薬)を用いる場合があります。心不全などからくる浮腫は全身の浮腫ですので利尿薬を使用すべき病気です。しかし、はっきりと診断されていない脚だけのむくみに対して、利尿薬は一定の効果はあるものの、薬剤による効果なのか、一時的な浮腫だったのか区別はできません。利尿剤は体内のミネラルのバランスを崩すことや、長期間使用すると内服しないと尿が出なくなる場合もあります。また、利尿薬で悪化する浮腫もありますので、安易に処方されることは注意が必要です。
薬剤より生活習慣改善が重要で、塩分を制限すること、運動すること、肥満を改善すること、同じ姿勢でいないこと、寝るときに脚を高くして寝る、体の外側から圧力をかけるために弾力のあるストッキングを着用することも有用です。薬剤による浮腫もあり、ロキソニンなどの痛み止めや、高血圧の薬(アムロジピンなどのカルシウム拮抗薬)が原因として挙げられます。