広報はぼろ2022年9月号掲載のコラム記事
国民のうち病気やけが等で症状がある方(有訴者)に関する統計を厚生労働省がまとめており、最新の2019年のデータでは人口1000人あたり302.5人とされており約3割の方が、65歳以上に限ると433.6人で43%以上がなにかしらの自覚症状があります。「腰痛」「肩こり」「手足の関節痛」の順に多いそうで、65歳以上に限ってみると、これらの症状がある方は30%を超えるとの結果です。
外来では「湿布もついでにもらいたい」と言われることが多くあります。上記の通り、湿布を使いたくなる症状の方は多くおり、病院を受診される年齢層はとくに多いからでしょう。2016年以降国の方針で湿布の処方に関して制限が設けられるようになりました。ありふれた症状に対する薬を保険診療で処方されることは、国の医療費を増大させることにつながるからです(80億円以上との試算があります)。もちろん、骨折や捻挫などの急な痛み、関節リウマチによる慢性の痛みの場合には、医療機関で湿布が処方されるべきです。
処方枚数の制限もあり、「足りない!」と言われることもあります。しかし、話を聞けば「1日で1袋使う」という方もいてびっくりします。「湿布は薬である」ということをぜひ認識していただきたいと思います。湿布は痛み止めとして使用される成分を含み、飲み薬と比べて臓器への負担は少ないものですが、当然枚数が増えると負担がかかります。4枚以上連日貼付すると胃潰瘍の危険度が上がるとの報告が従来ありますが、当院ではそれまでの枚数ではない方でも胃潰瘍を発生される方もいらっしゃいます。最近ではロキソプロフェンテープ1日2枚が5日を超えると内服に匹敵するとの報告もあります。
湿布は局所の炎症に対して用いるため、炎症が起こっていない場所に貼ってもあまり意味をなしません。骨折や捻挫、打撲、筋肉痛など炎症があれば有効ですが、脊柱管狭窄症など神経障害による痛みやしびれなどは、炎症ではないので湿布の効果は得づらいと考えられます。また急な痛み・鋭い痛みは冷やす方が良いですが、慢性的な痛み・鈍い痛みは暖める方が効果が高く、入浴してよく体を温めたり、蒸しタオルを当てて患部を温めることが有効です。薬局にも湿布が販売されていますので活用してかまいませんが、使用方法や使用量は注意しましょう。