広報はぼろ2023年9月号掲載のコラム記事
羽幌病院の入院患者さんから伺っている「社会的な問題」の中で、一つ気になったデータがありました。それは、入院患者さんには「高齢夫婦だけで住んでいる世帯(高齢夫婦世帯)」が一般における割合と比較して高いということです。2023年3月時点での羽幌町における人口構成のデータでは、高齢夫婦のみで住んでいる方の人口は19.9%、高齢単身者(独居)の人口は15.4%となっており、夫婦のみの方は独居の方の約1.3倍です。入院患者では、高齢夫婦世帯は30.9%、高齢単身世帯(いわゆる独居高齢者)が21.4%となっており、夫婦のみの方は独居の方の約1.5倍です。ですから、羽幌町の人口構成と入院患者の構成を比較すると、高齢夫婦のみの方が多い印象を受けます(このデータは1年間のみであることや、入院する方に若い方は少ないため町全体と入院患者という集団を単純に比較できませんが)。一般的には、「独居の高齢者は要注意」と認識されていると思いますが、実は「高齢夫婦世帯も要注意」とも考えられるのかもしれません。
独居の方に対しては、町内会を中心に周囲の方の気配り・目配りや、見守りサービスなどもありますが、高齢夫婦には「二人でいるから大丈夫ですよね?」といった安心感があるかもしれません。私自身も両親は高齢夫婦世帯ですが、正直に申し上げればそう考えています。都市部に住んでいるため近所付き合いも少ないようです。羽幌町のような地域では、まだまだお互い助け合える関係があると思います。しかし、そこに影を落としたのが新型コロナウイルスです。3年間のコロナ禍は、集まることの自粛を余儀なくされました。町内会の集まりや老人クラブなどの活動が制限され、仲間との飲み会も無くなってしまいました。徐々に制限は緩和されたものの、そのような交流が従前通りにできていないようなお話も耳にします。中高生の在学3年間に行事が十分にできなかったことはかわいそうに思っているのですが、それ以上に高齢者にとって3年間はもっとインパクトが大きいかもしれません。町内会や老人クラブの運営を引き継げなくなったり、新規入会者が集まらず活動縮小を余儀なくされたりしていないでしょうか・・・。「人と人のつながり」を「ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)」と近年表現します。これがコロナ後の社会において、健康を維持するためのキーワードになってきています。