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医療コラム

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2024.06.20 医療コラム

広報はぼろ2024年6月号掲載のコラム記事

「認知症」には様々な種類があり、どのタイプか?と断定することは難しいこと、正確な診断よりも支障をきたしている社会生活の改善が重要であると先月号でお伝えしました。「病気」として捉えるのではなく、そのような「特性」をもった個人をどのように支えていくかが大事であるという意味です。ただ、「病気」として扱ってほしいという思いを、本人よりは家族から聞くことが多くあります。大きな点としては、「病気」として「治療」してほしいという意味合いがあると思われます。

「認知症」に対する薬として従来使用されてきたのが、「ドネペジル(商品名はアリセプト)」で、その後、同じ類の薬として、「ガランタミン(同レミニール)」「リバスチグミン(同イクセロン/リバスタッチ)」が出てきました。日本のある報告では85歳以上の17%でこれらの薬を服用しているという報告があります。アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症では、神経伝達物質の1つであるアセチルコリンが脳内において減少していることが知られており、脳内にあるアセチルコリンエステラーゼというアセチルコリンを分解する役割を持つ酵素を抑えることで、脳内でのアセチルコリンの濃度を高め神経伝達を助ける作用があります。治療というと「治る」ことをイメージすることがありますが、認知症の治療の意義は「治る」ことではなく、「進行を抑える」ことになります。製薬会社による宣伝資料を読むと、「12週間後に認知機能が改善する」「1年程度進行を遅らせる」という結果を示すグラフが出てきます。やはり効果があると感じさせるのですが、ではどの程度改善させたかを詳しくみると、70点満点の試験で「3点」の差でありわずかに過ぎません。そして「進行を遅らせる」と薬の説明文には効果に関する記載はありますが、「認知症の病態そのものの進行を抑制するという成績は得られていない」とも記載されています。薬の有効性を示す指標として、「1人に効果を示すために何人に投与する必要があるか(治療必要数)」というものがあり、「10人」とする報告があります。実はこの数字自体は優秀な成績になるのですが、反対に「1人に副作用を示すために何人に投与する必要があるか(害必要数)」は「12人」とされ、ほぼ同じと言えます。つまり、1人薬が有効な人を出すときに同時に副作用も1人出すということになるわけです。

この点をぜひ理解しながら、治療を受けるかどうかを検討いただくと良いと思います。