広報はぼろ2024年8月号掲載のコラム記事
6月と7月で認知症の治療をお伝えしました。根治させたり、著明に認知機能を改善させる薬はないことがご理解いただけたかと思います。それであれば、ぜひ予防したいところです。
これまで様々な報告がされていますが、直近で2017年に出た論文がよく引用されています。認知症に関して「生涯を通じて9つの危険因子をコントロールし、脳の健康状態を改善できれば、認知症の35%は予防できる可能性がある」とした報告が出されました。この報告によれば、認知症は小児、中年、高齢といった人生の段階で、改善できる可能性があるものが提示されています。まず小児期においては、「教育期間の短さ」を修正することにより8%認知症の発症を抑えるそうです。これをお読みの方の多くはもう通り過ぎたと思っていらっしゃるかと思いますが、「教育」は必ずしも子供だけではありません。成人でも高齢者でも学ぶことは認知機能の維持に重要ですので、諦めずにぜひ「生涯教育」を!
9つのうち最も修正により発症を抑制できるのが「難聴」で9%です。聞こえが悪くなることにより情報を正確に聞き取ることができず覚えられなくなると想像されます。外来では口を酸っぱく「難聴は補聴器をつけた方が良い」と助言しますが、そのままにしているとやはり認知機能に影響していることを感じさせられることがあります。聞こえに不安のある方は、まず耳鼻咽喉科を受診してみましょう(羽幌病院は毎月奇数週の水曜日に診療を行っています)。
残り7つになります。まず生活習慣を是正することで脳梗塞を予防し、それによって脳梗塞後の認知症を減らすという観点です。「喫煙」は5%「運動不足」は3%、「高血圧」は2%、「肥満」「糖尿病」はそれぞれ1%で合計12%の抑制につながります。「糖尿病」は脳卒中による認知症だけではなく、海馬の萎縮が進行することも報告されているので、アルツハイマー型認知症にも影響していることが推測されています。
あと2つは「抑うつ」が4%と「社会的孤立」2%です。そもそも「社会的孤立」が「抑うつ」の原因でもあり関連しています。昨年、町内で講演会を複数回開催させていただきましたが、「健康のためのキーワードは「つながり」」です。町内会や老人クラブをはじめとした様々な集まりがあります。少なくとも週に1回は他人と会うなどするようにすることが認知症予防になります。