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医療コラム

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2024.09.20 医療コラム

広報はぼろ2024年9月号掲載のコラム記事

4月から認知症についてお話ししてきました。今回は最後に、認知症と診断されたり、物忘れが進んだ方に対する周りの方の対応について触れたいと思います。「同じ社会で共に生き、互いに尊重しつつ支え合う」ために最も重要なことです。

自分の大事な家族や友人が物忘れが進んでくると、その行動の変化への向き合い方に悩みます。まず基本として、その変化は本人の意思ではないことを心に留めておきましょう。認知症の初期は怒りっぽくなり、特に物忘れを指摘される時に目立つことがあります。本人にしてみると、自分自身を否定されたように感じてしまうからです。認知症の症状は、必ず理由があると言われます。例えば、徘徊するのであれば、何かを探しているのかもしれないですし、外の様子などが気になることもあるのかもしれません。声を上げることも、不安があって誰かにそばにいて欲しいのかもしれません。

コミュニケーションの工夫はいろいろあります。ゆっくり・はっきり話をすること、短くまとめて話すことが良いでしょう。「何しているの?」「こんなこともできないの?」といった否定的な言葉は避けておきます。その人本人の尊厳を重視することにつながります。また、「きっとできないだろう」とか「時間がかかる」を理由に、本人ができることを取り上げてしまうと自信をなくし傷つきます。自分でできることを尊重し、必要なところのみをサポートすることで、自己肯定感を高めることになります。

認知症ケアの技法として「ユマニチュード」が知られています。その名称は「人間らしさを取り戻す」という意味のフランス語に由来します。その基本は、「見る」「話す」「触れる」「立つ」にあります。本人にあなたに話しかけているということがわかるように声をかけ、目を合わせ、そして優しく触れることで、安心感と信頼感を築きます。日常生活での不安や混乱を軽減することにより、また、可能な限り立つことを支援します。身体機能を維持することは、介護者の負担軽減に繋がり、精神的な負担を軽くすることができます。

負担を減らす方法は、必ずしも自分たちの努力だけではありません。介護者自身のケアも必要ですから、家族だけで抱え込まず、デイサービスやショートステイなどの介護サービスをはじめ、地域資源を積極的に活用しましょう。困った時には、地域包括支援センターや担当医に相談されると良いでしょう。

これらのポイントを意識することで、認知症の本人・家族との日々の生活が穏やかに過ごせることを願っています。