広報はぼろ2025年5月号掲載のコラム記事
ベテラン芸能人の方の病気による休養が相次いでいます。「食道癌」での休養を発表された方がいますが、テレビで見て声がかすれている様子から少し気になっていました。
食道癌は、口から入った食べ物が胃へと運ばれる通り道である「食道」にできる癌です。胃や大腸よりは少ないものの、日本では毎年およそ2万人以上が診断されており、進行が早く、発見された時にはすでに治療が難しいこともあります。
食道癌の最も大きなリスクが「飲酒」と「喫煙」です。日本人はアルコールを分解する酵素の働きが弱い体質の方が多く、特にお酒を飲むと顔が赤くなる人は、危険度がより高いとされています。また、たばこを吸うことで食道の粘膜が慢性的に傷つけられ、これが癌の引き金になることもあります。さらに、熱すぎる飲み物や食べ物を習慣的に口にする方も、粘膜がダメージを受けやすく注意が必要です。食道癌ができやすいのは食道の真ん中です。食道はたわみやすい臓器で、体を横にすると真ん中に液体が溜まります。例えば飲酒後ならそこにアルコールなどが溜まりやすいことも一因と推測されます。飲酒後にはしっかりと水分を摂るのが良いかもしれませんが、有効性を証明したものはないようです。
「バレット食道」と呼ばれる状態もリスクとなります。胃酸が食道へ逆流する状態を長年繰り返すことにより、食道の粘膜が胃の粘膜のような形に変化してしまい、そこに食道癌が発生することがあります。日頃から胸焼けやのどの違和感、酸っぱいものが上がってくる感じが続く方は、内視鏡検査を受けておくことをおすすめします。
初期は自覚がないことが多く、症状が出始めたときには進行しているケースが多くあります。代表的な症状として、「食べ物が飲み込みにくい」「胸につかえる感じがする」といったものがあります。また、癌が神経や他の臓器に広がってくると、声のかすれ、咳、血痰、体重減少が現れます。
食道癌の診断には、まず胃カメラが行われます。食道の中を直接観察し、疑わしい部分があればその場で組織を採取し、顕微鏡で詳しく調べます。
治療は、ごく初期であれば内視鏡による病変の切除、進行した食道癌の場合は、外科的な手術や、抗がん剤と放射線を組み合わせた治療が行われます。患者さんの体の状態によっては、手術を避けて放射線や抗がん剤のみで治療します。
いずれの治療を選ぶ場合も、重要なのは早期発見です。そのためには、特にリスクの高い、お酒をよく飲む方、喫煙習慣がある方、逆流性食道炎の症状が長引く方は、年に1回の内視鏡検査を受けることが非常に有効です。