広報はぼろ2023年10月号掲載のコラム記事
日本は「助け合う」文化・精神があると思っています。災害時のボランティアをはじめ、誰から言われるでもなく自然発生的に助け合う姿や、団体スポーツで強さを発揮するところ・・・。ところが最近知ったのですが、日本は世界的に見ると、助け合いをする人の割合が少なく(先進国では最低)、交流がない人の割合がOECD加盟国で最も高く、社会参加も平均以下との結果が並んでいます。
「人と人がつながること」「地域社会の結束」は、健康にとって重要な要因であることが世界的に示されています。アメリカのある移民の町で、周囲の町と同様の生活(酒・タバコ・食事)で、経済水準も医療水準も同等にも関わらず、心臓病の死亡率が周囲の町よりも半分以下だった町があったそうです。その町が周囲の町と交流するようになり、町の結束が弱まったことで、周囲と死亡率が変わらなくなったとする報告があります。その考察として「地域のつながり」は健康を左右すると考えられるようになりました(1960年代の話)。その後、様々な報告が出ています。運動教室に参加している人は健康なのか調べた研究があります。参加している人が参加していない人と比べて健康であることは当然なのですが、運動していて教室に参加していない人と、教室に参加しているけど運動していない人を比べると、前者の方が介護認定に至る人が多かったとするものがあります。つまり、運動することよりも、運動教室に所属してメンバーと楽しく会話したりすることのほうが健康的なのです。ほかにも、趣味グループに参加している人の割合が高い地域ほど「うつ」の人が少ない、ボランティアグループや老人クラブなどへの参加割合が高い地域ほど認知症のリスクのある高齢者が少ない・・・などがあります。
最近「社会的処方」として、健康のために薬の代わりに地域組織などの社会資源を紹介する活動が広がっています。イギリスでは国の公的な制度として行われており、日本でも2021年に骨太の方針において記載されました。無理をして参加することがストレスに感じる方もいるかもしれませんが、地域の組織への参加・交流は、健康につながるということを知っていただければと思います。
半年間、社会的な要因が健康に重要であることをお伝えしました。最も伝えたいことは、「コロナ禍で失われた地域のつながりを取り戻していただき、それが自分自身のみならず地域全体の健康につながっていく」ということです。