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医療コラム

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2024.04.15 医療コラム

広報はぼろ2024年4月号掲載のコラム記事

2024年1月に「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」が施行されました。2025年には団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、認知症の方は高齢者の5人に1人にあたる700万人近くにのぼることが背景にあります。2019年に出されている国の認知症政策の基本方針が書かれている「認知症施策推進大綱」でも「共生」という言葉が用いられています。認知症は誰もがなりうるものであり、多くの人にとって身近なものとなり、認知症の有無によらず同じ社会で共に生き、互いに尊重しつつ支え合うことが強調されています。決して他人事ではなく、本人としてあるいは家族として当事者になるので、決して差別や区別があってはなりません。

このように法律に書かれていても、「認知症」という言葉の持つイメージは、一般の方々にとってはなかなか簡単には変わらないかもしれません。できれば自分自身を「認知症」と誰しも言われたくはないですし、なりたくないものです。家族が物忘れをし始めると「認知症」と扱いがちで、家族の関係がそれを機に壊れていく場合もあります。何事もそうですが、相手がわからなければ恐れてしまうものです。これから何ヶ月かにわたって「認知症」をテーマにし、まずは少しでも知っていただくきっかけになればと思います。

「認知症」は、様々な脳の病気により、脳の神経細胞の働きが徐々に低下し、認知機能(記憶、判断力)が低下することにより、社会生活に支障がある状態をいいます。年を重ねることで、ほとんどの方が思い出せないことが出てきたり、覚えることが難しくなるものです。これを「認知症」とは呼びません。認知機能が軽度低下している人のことを「軽度認知障害(MCI)」と言いますが、これに該当する方が皆「認知症」に進行する訳ではありません。「加齢による物忘れ」と「認知症による物忘れ」を見分けるポイントは、①もの忘れの自覚:加齢の場合は自覚があり気にしていますが、認知症の方はあまり自覚していません(初期の認知症の方は、物忘れを指摘されると否定することが多いです)、②体験の記憶:加齢の場合は出来事の一部(例えばご飯のメニュー)を忘れますが、認知症は出来事全体(例えば食べたこと自体)を忘れます、③進行:加齢の場合は変化がないか極めて緩やかな低下ですが、認知症の場合ははっきりと進行していきます。脳の病気以外で認知機能が低下することもありますので、認知機能低下の進行が速い場合は医師に相談することが良いでしょう。